近年、クウェートサウジアラビアUAE(アラブ首長国連邦)などの湾岸アラブ諸国では、子どもたちの英語力向上と引き換えに、アラビア語力の低下が社会的な課題として認識されるようになっています。

実際に現地で暮らしていると、

「子どもが英語の方が得意」
「学校の宿題は全部英語」
「家族同士でも英語が混ざる」

という家庭は珍しくありません。

しかし最近では、その流れに変化が見られます。

先日、ギャザリングでこんな話を耳にしました。

バイリンガルスクールに通う一定数の子どもたちの間で

アラビア語(クウェート方言)でおしゃべりをするのが

“COOL” だと思われているのです。

数年前までは、アラビア語に苦労していたように見えたバイリンガルの子どもたちは、高学年になるに連れて

堂々とアラビア語でおしゃべりをしているのです👏👏👏

アラブ人の間で、改めてアラビア語の重要性が見直されていると言えます。


湾岸諸国で進んだ英語化

石油産業の発展とグローバル化によって、湾岸諸国では英語が事実上の共通語として機能しています。

特にUAEやカタール、クウェートでは人口の多くを外国人労働者が占めており、職場や商業施設では英語が日常的に使われています

そのため、

  • 英語系インターナショナルスクール
  • 英語で行われる大学教育
  • 英語中心のビジネス環境

が急速に広がりました。

結果として、多くのアラブ人家庭が子どもを英語系インター/バイリンガルスクールへ進学させるようになりました。


「英語は完璧なのにアラビア語が苦手」という現象

湾岸諸国では近年、

「英語はネイティブ並みに話せるのにアラビア語の読み書きが苦手」

という若者が増加しています。

アラビア語は英語よりも文法体系が複雑で、家庭で話す方言(クウェート方言、湾岸方言など)と学校で学ぶ正則アラビア語(フスハー)が異なります。

そのため、

  • 会話はできる
  • でも本が読めない
  • 正式な文章が書けない

というケースも少なくありません。

実際、湾岸地域では「子どもがアラビア語の授業を嫌がる」という話を耳にすることがあります。


高まるアラビア語への危機感

こうした状況を受け、近年はアラブ人の親たちの間で危機感が高まっています。

背景には、

① 国家レベルのアラビア語保護政策

サウジアラビアでは「King Salman Global Academy for Arabic Language」が設立され、アラビア語普及を推進しています。

UAEでも「Arabic Language Charter」などの取り組みが行われています。

各国政府がアラビア語を国家アイデンティティの中核として位置づけています。


② アラブ人としてのアイデンティティ意識

近年の湾岸諸国では、

「アラビア語は単なる言語ではない」

という認識が強まっています。

アラビア語は、

  • コーランの言語
  • アラブ文化の基盤
  • 家族や部族の歴史

と深く結びついています。

そのため、

「英語しか話せないアラブ人」

に対して危機感を示す声も増えています。

SNS上でも

アラビア語を話せないアラブ人が増えている

という議論がたびたび話題になります。


③ 地域文化への再評価

湾岸諸国では近年、自国文化の発信にも力を入れています。

サウジアラビアのビジョン2030や各国の文化振興政策により、

  • 伝統文化
  • 民族衣装
  • 歴史

への関心が高まっています。

その流れの中で、アラビア語の価値も再評価されています。


実際に増えているアラビア語教育への投資

現地では、

  • アラビア語専門チューター
  • 放課後アラビア語塾
  • コーラン暗誦クラス

などを利用する家庭が増えています。

英語系インターに通わせながら、

「アラビア語だけは別途強化する」

という家庭は珍しくありません。

特に教育熱心な家庭ほど、

英語+アラビア語

両立を目指しています。


日本人にとっても無関係ではない

日本では英語一強のイメージがありますが、中東の経済的重要性は年々高まっています。

湾岸協力会議(GCC)諸国は、

  • エネルギー
  • 投資
  • 航空
  • 観光
  • IT

など幅広い分野で存在感を増しています。

日本企業の進出も続いており、アラビア語人材への需要は今後も期待されています。


アラビア語は「ニッチな言語」ではなくなりつつある

世界のアラビア語話者は4億人以上とされます。

国連の公用語でもあり、中東・北アフリカを中心に広大な地域で使用されています。

さらに近年は、

  • サウジアラビアの経済改革
  • UAEの国際ハブ化
  • 湾岸諸国の対日投資

などにより、日本人にとっても接点が増えています。

アラブ人自身がアラビア語の価値を再認識している今、日本人にとってもアラビア語はこれまで以上に注目すべき言語になっているのかもしれません。


おすすめのアラビア語学習教材

アラビア語に興味を持った方へ。

▶ 初学者向け文法書

『今日からはじめる みんなのアラビア語』

初心者でも取り組みやすく、日本語話者向けの定番教材です。


▶ アラビア語辞典

『現代アラビア語辞典: アラビア語ー日本語』

長く使える一冊。学習を続けるなら持っておきたい辞典です。

『パスポ-ト初級アラビア語辞典』

長い間、日本のアラビア語学習者に親しまれてきた一冊。


▶ 子ども向けアラビア語絵本

多言語育児家庭にもおすすめ。

英語だけでなくアラビア語に触れる機会を作ることができます。



湾岸諸国で今起きているのは、単なる語学教育の話ではありません。

グローバル化によって英語を手に入れた社会が、自らの文化的ルーツであるアラビア語の価値を改めて見つめ直している

そんな大きな変化の最中にあるように感じます。

現地で暮らしていると、「英語かアラビア語か」ではなく、「英語もアラビア語も」という方向へ社会全体が動いていることを実感します。

日本ではまだあまり知られていませんが、この動きは今後ますます注目されるかもしれません。

英語・日本語・アラビア語|多言語育児で欠かせない3つのサービスと活用法