このシリーズでは、日本出身の筆者がクウェート人の義理の家族と同居してて感じる日本との違いや興味深いと思うことをご紹介します。
クウェート人の義理の家族(主に姑)と同居してて興味深いと思うことは日々たくさんあります。
シリーズ第一弾
今回はクウェート人と「電話」に焦点を当てて、私目線でお話ししたいと思います。
とにかく電話好きなアラブ人
クウェート人はもとよりアラブ人全体に言えることだと思うのですが、彼らは電話が大好きです。
うちの姑の妹なんか、玄関のドアを一歩出て車に乗り出したら早速さっきまで一緒にいた姉(姑)に電話します。
さっきまでずーっと一緒にいたのにまだ話すことがあるのかといつも家族に笑われています。
姑をはじめとして、私の義理の家族は朝から夜遅くまでずーっと着信があり、誰かに電話をかけています。
ワッツアップの着信も一日中引っ切り無しに鳴りっぱなしです。
姑は一階に住んでいるので一日中アラビア語の会話が二階まで聞こえてくるのです。
姑は70代で、七人兄弟の長女です。
兄妹とは毎日電話で話すと教えてくれました。
毎日です。
特に一番上のお兄さんには毎朝電話するそうです。
話すことなんていくらでもあります。
「今日の調子はどう?」
「次女の旦那の親が病気だ」
「長男が新しい仕事を始めた」
「来月の頭にはスペインのアパートに行くんだが一緒に来ないか」
「今日は今からサロンに行くの」
「今日のうちのランチはマチュブースよ」
「今週末はシャーレー(海の別荘)に遊びに来なさい」
話の話題は尽きません。
彼らはお互いを心底気にかけ、相手の問題は自分の問題であり、相手の悩みは自分の悩みのように真剣に相談に乗ります。
これは特に姉妹間で顕著に伺えます。
日本の感覚だと「この時間帯に電話して大丈夫だった?」とか、あんまり長電話すると相手に申し訳ないからと電話を手短にしますが、こちらの人は長電話は普通です。
旅行中の電話
姑が旅行に行くと、毎日夫に電話がかかってきます。
これも最初はかなりカルチャーショックでした。
旅行中くらい目の前のことだけ楽しめばいいのにと私は思ったものです。
クウェート人家族の面白い習慣は旅行中の頻回メッセージです。
旅行に行く際、空港に着いたとたんから次から次にアップデートのメッセージが入ってきます。
「今空港に着いた」
「チェックイン完了」
「今飛行機に乗った(写メ付き)」
「今から離陸」
「もういかないと。バイバイ」
離陸寸前までいろいろとメッセージが送られてくるので最初のころは本当におかしかったです。
旅行先についてからも毎日電話がかかってきて、数十分話しています。
もちろんビデオ通話です(笑)
旅行中くらいいいのにと思うのはどうやら日本人の私だけのようで、姑も義理の家族も、夫もごく当たり前のことのように話しています。
日本の家族との電話
一方で、私は遠い日本から家族と離れ離れで暮らしているにもかかわらず、毎日まで電話しません。
ラインも毎日しません。
あまりにも疎遠になるとクウェート人の夫がしびれを切らして、私に家族に電話をかけるように催促してきます。
例えば土曜日の朝、朝食をとっているときに父に電話をしようと言ってくるのです。
私からしたらなんで今なの?今食事中じゃん?と思うのですが、家族全員がそろってるときに私の実家に電話を掛けたいようです。
私的には、実家の両親の多忙さを熟知しているのでこの時間帯にかけても出ないとなんとなくわかるのですが、夫は何週間も音信不通になるのは耐えられないしいけないことだというのです。クウェート人の夫からしたら私の音信不通度は異常で信じがたいのでしょう。
確かに実家に長らく電話しないことはいいことだとは思っていません。
少なくとも一週間に一回は電話をしたいと思っていますが、時差もありますし、お互い忙しくて出られない時もしょっちゅうです。
有難いことに両親は退職後も多忙な日々を過ごしていますが、少なくとも週末は忘れずに時間を決めて電話しないといけないなとは思います。
子どもたちも日本の祖父母と話すのは新鮮なようですし、日本語でアウトプットするいい機会でもあります。
日本人の電話とアラブ人の電話の大きな違いの一つが通話時間です。
日本人はたまにしか電話しないのに短い通話時間。(笑)
何でもかんでもぺちゃくちゃ話すこちらの文化とは違って日本人同士だとどうしても相手のことを考えすぎてしまって、ついつい手短に済ませようとしがちです。
日本の両親の電話を切る早さはクウェートに住んでるとおかしく感じますね。
だからと言って、私たち日本の家族がお互いを大切にしあってない訳ではありません。
日本は核家族で親戚同士のつながりも希薄ですが、子が両親を思う気持ちや両親が子を思う気持ちに国境や宗教は関係ないと思います。
そうは言っても、イスラム教徒の両親愛や家族愛は一般的な日本人の家族愛とは比になりません。
これは宗教の教えも関係しています。
いつでもどこでも電話
クウェート人の夫は一日の中でよく電話で話しています。
仕事のこと、頼まれごと、頼み事、友達との雑談。
ありとあらゆることを包み隠さず大声で話しています。
お陰で私のアラビア語リスニング力を日々鍛えられている気分です。
クウェートでは、職場で私用の電話をしているからと言って文句を言ってくる上司はほぼいません。
医者も看護師も、弁護士も、学校の先生も、ビジネスマンも、職場で家族や友人と長電話するのはいたって普通です。
子どもの予防接種に行ったら看護師がずーっと電話でおしゃべりしながら注射されたなんてこともあります。
ヒジャーブに電話を挟んで買い物をするアラブのおばさんもスーパーに行けばざらにいます。
アラブの人々にとって、家族と近況を報告しあい、用がなくても電話をするのは愛情表現の一つなのです。
アラブ人は人情が深い人々ですので、こういう地味なつながりをとても大事にします。
相手は元気で何も心配することはない、特に用事もないと分かっていても、電話一本入れて
「調子はどう?家族は元気?」と気遣いを示し合うことで、もし何かあった際にはいつでも頼ってね、もし何かあったらいつでも頼るわと日々確認し合っているようなものではないでしょうか。
クウェートに嫁ぐまで知らなかった「家族愛の深さ」がここでは感じることができます。
家族は運命共同体なのです。
これほど家族の結びつきが強固で、揺るぎないものであったら、人生の大方の心配事は無くなるような気がするのは私だけでしょうか。
静かな朝はありませんが、孤独に過ごす夜もありません。
「いつでも誰かがきっとそばにいる~♪」
ぽんぽこたぬきの歌のようにアラブではいつでも家族がそばにいます。
最後に、クウェートの義理の家族と過ごしていてずっと抱いている疑問は
「こんなに結びつきの強い家族・兄弟がこの世に存在するんだ!どうやったらここまでなれるの?どんな育て方をしたらこんなに兄弟愛が強くなるの?」でした。
夫は言います。
「亡くなったおばあちゃんママ・バドリーヤのお陰だよ。彼女の生き様、彼女の育て方が彼女の子どもたちをああいう風にしたんだ」と。
惜しくも私はママ・バドリーヤに会うことはありませんでしたが、夫のおばあちゃん、姑の母親は偉大な人物だったのでしょう。
これは疑う余地がありません。
まとまりがない文章ですが、クウェート人義理の家族と同居していて思うこと① 電話と家族というテーマの小話を終わります。

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