移民の受け入れが問われる昨今、日本国内でのイスラム教徒の増加は日本社会にそれなりのインパクトを与えていると言っても過言ではないでしょう。
宗教的な制限が多いと言われるイスラム教徒との交際で筆者が実際に直面した「宗教的な壁」や「文化的相違」についてご紹介します。
筆者は現在、イスラム教徒結婚して中東のクウェートに10年ほど住んでいます。
大変だったこと①食事
ご存知の方も多いかと思われますが、イスラム教徒は豚肉やアルコールを摂取しません。
肉の塊としての豚肉だけでなく、ラードやポークエキスなど目には見えない調味料としての豚も禁止されています。
アルコールは、お酒はもちろんお酒を使ったお菓子やワインで煮込んだシチューなどもアウトです。
それだけならまだしも、イスラム教徒の中には「ハラール」でない動物の肉は一切口にしない人々もいます。
ハラールとは、アラビア語で「許可されたもの」を意味します。ハラールフードの場合、「イスラム教の法則に則って屠殺された合法な食べ物」を意味します。
日本はキリスト教が主なアメリカなどの一神教の国ではないので、多くのイスラム教徒にとっては「ハラールフード」を追求しずらい国と言えます。
外国人観光客の増加に伴いハラールレストラン数は増加しているものの、それでも地方や一般的なレストランではハラールでない牛肉や鶏肉を使ったお店がほとんどです。
イスラム教徒の中には、「豚じゃなければOK」とする人もいますが、宗教心の篤い人々は日本では肉類を一切口にせず、魚料理などを選択します。
交際中に大変なのは、パートナーと外食をする際のレストラン選びや、家で料理をするときに調味料から全て食材をチェックしないといけないので手間がかかることです。
現在のようにイスラム教国に住んでる場合は、国内のもの全てハラールなのでそういった煩わしさはありませんが、日本に一時帰国する際は大変です。
大変だったこと②礼拝
イスラム教徒は1日に5回、メッカの方角に向かってお祈りをします。
朝は日の出前から夜は日没後まであります。イスラム教国に住んでいる場合、国民のほとんどはイスラム教徒ですからモスクは街中にありますし、礼拝時刻を知らせるアザーンもモスクから大音量で流れてくるので礼拝に気を向けやすいです。
しかし、日本の場合は礼拝スペースを見つけるのも一苦労な時があります。
職場では、礼拝の時間だからといって5分ほどその場を離れることを理解していない同僚や上司もいるかも知れません。
イスラム教独特の決まった時刻に礼拝をするという行いは、多くの日本人にとってはまだまだ馴染みが薄く、理解されていない部分があると思われます。
大変だったこと③結婚観
これは私個人にはあまり当てはまらないですが、イスラム教徒は「交際イコール結婚」と考えるので、付き合うということは結婚を前提にお付き合いをするという意味になります。
ですので、付き合った女性を「彼女」ではなく「妻」という風に周囲に紹介する人もいます。笑
イスラム教では一夫多妻制が合法とされていますが、宗教的に推奨されているわけではないことを強く強調したいと思います。
私の住む中東のクウェートでも一夫多妻は稀ですし、妻が複数人いる場合は相当な理由があります。
総じて、イスラム教徒の男性は「自分の妻(彼女)を過保護なほどに守る」のが普通で、異性(友人含む)との関係にちょくちょく口を出してくるでしょう。
大変だったこと④ラマダン中の断食
パートナーがイスラム教徒の場合、日本にいてもラマダン月には断食をします。パートナーだけがイスラム教徒なら、相手のいない所で飲み食いをすればいいですが、断食中は飲食だけでなく様々な「欲」を制限するので、きちんとイスラム教の決まりを理解していないとパートナーの負担になってしまうこともあります。
例えば、ラマダン中は断食をしているパートナーを日中食事に誘ったりはしないですし、タバコを目の前で吸ったり、相手を誘惑するような行為は絶対に避けましょう。
自分もゆくゆくは改宗する予定なら、一緒にラマダンをするのもいいですね。半日とかから始めて徐々に練習すれば断食する人の気持ちも少しは分かる様になります。
大変だったこと⑤言葉の壁
イスラム教徒の交際相手は外国人がほとんどだと思います。そうすると相手の国の言語をある程度は知る必要があります。
私の場合はアラビア語でした。交際相手が家族や友人とアラビア語で会話しているのを聞いてもさっぱり訳がわからないと疎外感を感じずにはいられません。相手の国の言語を学ぶのは昔も今も大変です。

まとめ
いかがでしたか?
イスラム教徒はもはやマイノリティではなく、世界のマジョリティになりつつあります。その人口は2030年には22億人となり、世界人口の26.4%を占めると言われています。(参照HP)
日本でも賛否両論はありますが、今後もイスラム教徒の人口は増えていくでしょう。
移民による犯罪や土葬問題、給食での特別メニューの要請など日本社会にインパクトを与えているイスラム教徒ですが、個人的に付き合うとなると人一倍いや、二倍も、三倍も苦労を感じるかも知れません。周囲の理解を得るのも大変かも知れません。それでもお二人の間に宗教も国境も越えた「愛」があるのならば、アッラーが導いて下さったご縁談に身を任せるのもいいのではないでしょうか。その際は、ご自身のためにも是非イスラムの勉強を熱心になさって理解を深めて下さい。